ナス

インド原産のナス科の野菜で、野菜の中でも特に高温性である。通常みられる長卵型から米ナス型のような大型のもの、40㎝以上にもなる長ナスや、長田ナスのような漬物に向く4㎝ほどの小ナスがある他、果皮が緑や白色のものもある。

作型

 一般的に露地栽培が作りやすいとされるが、病害虫防除や夏季の高温乾燥期の対策が必要となる。定植を早めて栽培期間をより前進化する作型は早熟栽培となる。この場合、定植時はトンネル被覆による保温を必要とする。作型によって適性品種は異なるが、一般的な露地栽培では「千両二号」や「改良千黒」が高温期でも草勢が低下しにくく作りやすい。

種子

種子は播種後に潅水すると速やかに吸水する。種子の発芽適温は野菜の中でも高い25~30℃で、最低15℃、最高40℃程度である。発芽後は23~25℃で生育させると良く、7~8℃以下では低温障害を受け、45℃以上になると葉焼けや壊死がみられる。
 発芽後は子葉を展開し、本葉を次々と分化させて栄養生長する。本葉2~3枚展開時はすでに8~9枚ほど分化しているが、この時期に茎頂は発芽分化するようになっている。
 最初の発芽分化は環境条件にもよるが、播種後25~30日程度にみられる。以降、分枝の発育に続き、次々と花芽形成しながら発育していく。開化前に低温や高温に遭遇すると正常な花粉が形成されず、受精能力の無い花となり落花する。もし結実しても小さく、奇形果となってしまう。夜温が高いと短花桂花となりやすく正常な果実ができにくい。また、ナスは光が当たると発芽しにくい為、覆土をしっかり行い、暗黒条件下で発芽させるのがよい。

苗の生理生態

 育苗床は穴あきフィルムなどを活用し、ハウスの開閉と合わせて温度管理を行う。7~8℃以下になると低温被害を受けるので、夜間は温床を必要とする。定植の一週間以上前には15℃まで下げて順化させておくと定植後にストレスが少なく、活着が早く、初期収穫も上がる。
 第一花は8~9節で着生し、以後2枚おきに花がでる。側枝も同様に展葉するが、光が不十分だと着花するまでの葉の数が多くなる。育苗時から混みすぎないようにポットを配置し、光を十分に当てるようにする。
 育苗日数は台木の播種から定植まで約110日を要する。無理に早めると温度を高める事になり、軟弱徒長した苗となるので注意が必要。

育苗

 均一に詰めないと、セルに入る用土や肥料の量が異なり苗が不揃いになりやすくなる。用土に肥料を添加する際は十分に混和させる。セルトレイは128穴が使いやすい。播種後はビニールハウス内にサーモスタットを備えた電熱線を敷き、その上にセルトレイを並べて加温することが多い。
 温度は一定(恒温管理)でもよく発芽する品種もあるが、揃いが悪くなり易い。揃えて発芽させる為には変温管理を行う。昼間28~30℃を目安とし、夜間20~23℃程度に管理する。一定の高い温度で発芽させると生育がばらつきやすくなり、その後の生育も揃わなくなるので注意が必要。どちらかというと温度はやや低めの方が揃いやすい。出芽後は昼温25℃に下げて管理し、徒長させないよう水のやりすぎに気を付ける。

接ぎ木

 台木の品種は、被害の大きい青枯病や半身萎凋病に抵抗性がある「トルバム・ビガー」や「トナシム」を使用すると良い。ナスは接ぎ木苗が一般的で、穂木よりも台木の生育が遅いため、台木は早めに播種する。
 ナスの場合、割継ぎや斜め合わせ継ぎを行う場合が多い。接ぎ木した順化後は、10.5㎝~12㎝の大きめのポットに鉢上げして、根の老化を防ぐ。小さいポットだと根鉢が固まり、定植後の活着が悪くなるので使用を避ける。育苗中に本葉同士が触れ合うようであれば、株間を広げて徒長しないように注意する。