サツマイモ

 サツマイモは熱帯中南米原産のヒルガオ科の植物。日本では九州から関東地方で主産地がみられる。栽培は粗放的でよく、繁茂するので雑草を抑えることができる。肥料も少量でよく、農薬もあまり散布しないので環境を荒らさず栽培できる。

・作型
 作型の幅は広く、普通栽培では四月下旬~六月中旬まで可能で、植え付けから4~5ヶ月で収穫となるので、9月中旬~11月中旬まで収穫できる。マルチをすることで生育促進や食味の向上、雑草防止、中耕・培土作業の省略が期待できる。
 品種は一般に流通する青果向けでは「ベニアズマ」や「高系14号」が多く、加工向けに適する品種や、カロテンやアントシアニンを含みオレンジやムラサキの肉色になるものもある。栄養分ではデンプンが25%程度で最も多いが、カリウムやビタミンC、カルシウムも比較的多い。

・苗の生理生態
 苗の葉柄基部から発生する不定根の一部が肥大してイモ(塊根)となる。苗の発根、活着には15℃以上が必要。日照は多く、高温を好み茎葉の発育は30~35℃で旺盛となる。イモの肥大には22~26℃が適温とされる。土壌はpH5.0~7.0に適応するが6.0前後が最適である。排水性や通気性のある火山灰土や砂質土が向き、窒素が多く残っていないことが望ましい。

・育苗
 イモの基である根源基は育苗中に形成される。この根源基が各節にあり、徒長せず、苗長25~30㎝で展開葉が6枚程度の苗が良質である。こうした良質な苗は、健全なイモから作られるので、形・皮色・揃い、などの品種の特性を持ち200~300g程度で無病のイモを準備する(前作のものを貯蔵しておく)。低温障害や形質の劣化しているイモは利用しない。通常は種イモ一個から20~30本採苗できるが、品種によって多少がある。貯蔵した種イモは黒斑病や蒸れなどで傷んでいる場合があるので47~48℃の温湯に40分間浸して温湯消毒する。
 苗床は、肥沃度によって増減するが、普通の畑土を使用する場合は1㎡あたり、窒素、リン、カリをそれぞれ15~20g施用する。種イモを並べるときは頂部を上にしてやや斜めに植え、頂部が隠れる程度に覆土し、トンネルやマルチで保温する。
 萌芽までは30℃、萌芽後は25℃で夜間は18℃を目安に温度管理する。約30~40非で採苗できるので3~4㎝基部を残して切り取る。

・定植
 切り取った苗は乾かないように新聞紙などにくるんで涼しい場所に保管する。葉柄の付け根から根が伸び出している状態が適期である。
 窒素の吸収力が強いため、施用量は少なくする。養水分の保持力がある黒ボク土では3㎏程度の成分量とし、野菜作業などは施用しない。リンやカリは基肥に10㎏程度施用する。堆肥は養分補給と物理性の改善効果があるので、藁や落ち葉、もみ殻などの植物質主体で完熟させたものを施用する。未熟堆肥ではコガネムシの幼虫による食害が増える。害虫はセンチュウ害も問題になるが、前作に落花生や里芋、ギニアグラスなどを栽培すると被害を減らす効果がある。
 植え付けは、マルチを張った高さ20㎝程度のカマボコ型の畝に行う。畝幅は90~100㎝とし、株間30㎝前後とする。植え付け方法あ、短く太い苗ならば基部の2~3節にイモがつくように直立植えや斜め植えを行うと肥大が早いので早掘りに向く。大苗で良質な苗の場合は、4~5節を土中に入れる水平植えや舟底植えが適する。