キャベツ

 キャベツはアブラナ科の野菜で原産地は地中海沿岸地域である。キャベツは非常に多くの品種が育成されている。栽培する時期と目的に合う品種を選定する事が重要である。

・作型
春播きは生育初期が低温期なので低温に強い性質が望まれるが、生育後半は初夏の気温上昇期で生育が進み一斉に収穫が始まるので、在圃性が高い品種を選ぶと良い。温暖地は2~3月に播種し、5月下旬~6月上旬に収穫する。品目と播種時期によって花芽分化抑制や抽苔回避を目的に被覆すると良品生産が可能。
 夏播きは育苗期から定植後の生育初期が高温で乾燥しやすく病害虫も多いが、生育後半は低温になり栽培しやすくなる。作型は7~8月中旬播きで年内どり、8月中旬以降で秋冬どりとなる。ただし、5~6月に収穫する場合、主に専作農家で地床育苗による方法も多く、10月~11月に露地の育苗床に播種する。

・種子
 キャベツの発芽適温は15~30℃と幅がある。生育適温は15~20℃と低めだが、5~25℃ならば支障なく生育する。
 春播き初夏どりの場合は発芽から生育初期が生育適温以下となるため、最も注意する事は花芽形成の抑制である。花芽が分化されると植物の栄養生産は停止し、葉数は増えなくなるので、花芽分化はさせない方が望ましい。キャベツはニンジンやタマネギと同じ緑植物感応型である。この性質を理解して栽培管理することがポイントとなる。
 夏播き栽培では生育初期は高温期となるので花芽分化の心配はないが、冬は花芽分化することになり、春になれば抽苔が始まる。春先まえ収穫を伸ばす場合は、晩抽性の品種を選ぶ。

・育苗
 地床育苗は、主に根の再生力が強いキャベツやブロッコリーで行う。地床育苗では施設を必要とせず収量性や生産安定性があり、一斉収穫に向くなどの利点はあるものの労力がかかる。最近は夏季に猛暑日が続くことが多いが、定植適期が短いセル苗では、雨待ちをしている内に時期を逃し生育が遅れ、収穫が不安定になることがある。苗が大きい地床苗は、慣行のセル苗よりもやや乾燥に強いため、負担は多いが地床苗を好む生産者もいる。但し、きちんと活着させるには夕方に定植し、直後と翌日の最低2回はきちんと潅水する必要がある。
 種子は10a当たり0.8mL、播き床は30㎡ほど必要である。播種は条間6~8㎝、株間4㎝を基準とし、幅80㎝、高さ5㎝程度のベッドを作って行う。播種後30日程度で本葉5~6枚の苗になるので定植する。苗は3~5日前に根切り処理を行うと良い。フォークで苗を軽く持ち上げ断根処理し、潅水して細根の発生を促しておく、ワイヤーでベッドの下を引っ張って根を切断する方法もある。夏播きでは害虫が多いため、防虫対策に1mm目合いのネットを播種後からトンネル被覆すると良い。この時、裾を埋めておくとより効果が高い。
 セル育苗はセルの大きさにもよるが、苗が小さく定植適期が短い。高温期は培地が乾燥しやすく潅水労力がかかるなどのの欠点はあるが、市販されている資材を用いるため栽培が容易で土壌病害を回避できる。施設内での育苗のため、自然環境に左右されにくく苗の生育を均一にしやすいなどの利点がある。。キャベツは無加温育苗も実用化されつつあり、育苗時にトンネルやべたがけ被覆による保温処理んみで強健な苗ができる。
 セル育苗では、潅水を底面給水で行うと均一に潅水しやすく、誰でも苗を植えやすい。図1のような給排水装置は低コストで簡単に設置できるので、送水はタイマーで行えば省力化できる。頭上潅水ではムラができやすく、一度乾燥した培地には水が浸透しにくく、培地の上部のみ湿りやすい。きちんとセルトレイの下部まで濡れているか確認することが重要である。
 セルトレイは夏期は25穴程度、冬期の128穴や144穴が適している。加温育苗であれば30日程度で定植期となる。無加温育苗も可能で40日程度を要する。キャベツは一条植えで条間60㎝、株間33~40㎝、ブロッコリーは条間60~70㎝、株間30~40㎝を基準にし、品種特性によって変える。

・定植
 キャベツの根域は直径1m、深さは50㎝程度まで広がるが、多くは酸素の多い浅い層に分布している。湿害に弱いので排水性を高めたほうが良いが、乾燥しすぎると肥効も悪くなり生育遅延になるため土づくりや畝立ては入念に行う。
 施肥は2t/10a程度入れ、石灰は土壌診断に従い必要量を施用する。根こぶ病が出やすい圃場はpH7.0近くに調整すると発病の抑制効果がある。施肥は栽培する時期の生育に対応して適切に実施する。
 セル苗の定植は覆土が1㎝程度になるようにやや深植えで固定するが、鎮圧する際に根鉢を潰さないようにする。植え付けが浅いときは、根鉢の乾燥により枯死株が多くなり、株の倒状程度が増して結球量が小さくなる。キャベツは本葉一枚目の付け根まで埋め込んでもあまり影響はない。肥料は全面施肥でもいいが、作条(畝内)施肥にすると定植後速やかに吸収され活着が良く、利用効率も高い。肥料の種類は、低温期での肥効を高めるために速効性の肥料の割合を多くし、追肥よりも基肥に重点を置く。