キュウリ

 キュウリはヒマラヤ山脈からネパール付近を原産地とし、中国やヨーロッパで栽培種が発達した。日本のキュウリは中国南部から渡来した華南系(黒イボ系)と中国北部から渡来した華北系(白イボ系)との大別できる。

作型

 キュウリの作型は、3~4月播種のトンネル栽培または露地栽培が基本で、トンネル栽培は早熟栽培、露地栽培は秋夏栽培とも呼ばれる。
 定植期は播種後16~40日である。寒さに弱いので定植期が早いほどトンネルによる保温や防露対策が必要になる。収穫は3月播種で5月中旬、4月播種で6月中旬から始まり、8月頃まで続けられる。

種子、苗

 キュウリは嫌光性種子だが、その性質が現れるのは低温時である。発芽温度は15~40℃で、15℃を下回ると発芽しにくくなる。実用的な発芽温度は25~30℃である。発芽後は高温多湿条件で容易に徒長する。
 生育適温は、昼間22~28℃、夜間13~18℃、地温16~18℃である。生育限界温度は5℃で、0℃になると凍害が発生する。日長が短いとき(短日)、日照が弱いときは生育が抑えられる。光合成の光飽和点は5万luxで、光合成産物の大半は午前中に作られる。根は酸素要求性が強く、浅根性では乾燥に弱い。一株に雄花と雌花が着生するが、雌花の着生は夜間15℃前後、日長7~8時間で促成される。窒素肥料が効きすぎて草勢が強くなると雌花は抑制される。

播種

 播種するための容器は育苗箱、ビニールポット、セルトレイなどがある。育苗箱の場合は2~3㎝間隔で筋状に播種し、子葉が展開した後に9~10。5㎝のビニールポットに鉢上げする。直接ビニールポットに3粒程度を播種し、子葉展開後に一株に間引いても良い。
 セルトレイの場合、セル苗を直接定植する方法と、一度鉢上げしてから定植する方法がある。前者は50~55穴の培地容量の大きいセルトレイに播種してそのまま育苗して定植する。後者は128穴などのセルトレイに播種し、子葉展開後にビニールポットに鉢上げする。

温度管理

 発芽温度は前述の通りで、20~30℃の温度が確保できるよう苗床を準備する。電熱、または踏み込み式の温床の利用や、穴あき農ポリ、不織布、遮熱フィルムを使用してこまめに温度管理を行う。発芽後は軟弱徒長を防ぐために温度を下げていく。定植期が近づいたら定植後の環境変化に耐えられるよう、外気に慣らす事も大切である。

潅水管理

 水温に注意する。播種間際や直接の潅水は用土の地温を下げるためあらかじめ十分に潅水を行い、苗床の地温を高くする。育苗中の苗は低温に敏感で、水温に近い冷水を散水すると障害が発生するので注意する。潅水のやりすぎにも注意する。用土の水分が多すぎると軟弱徒長気味に育つだけでなく、根の発達が遅れ、定植後の活着が悪くなる。

接ぎ木

 キュウリはつる割病などの土壌病害を回避し、低温伸長性を高めたり草勢を強めたりする目的で接ぎ木が行われる。台木には同じウリ科のカボチャが使用される。接ぎ木方法は呼び接ぎや挿し接ぎがある。

施肥管理

 キュウリ1tを生産するのに必要な養分吸収量は、窒素2.4kg、リン0.9kg、カリ3.4㎏、石灰2.8㎏、程度とされる。露地栽培で目安とされる収量8t/10aに必要な養分量は、単純計算で窒素19.2㎏、リン7.2㎏、カリ27.2㎏、石灰22.4㎏になるが、窒素・カリは降雨で流亡しやすく、リンは吸収されにくいため、実際には吸収量よりも多めの施肥となる。
 一度に施肥せず分施したり、長持ちする被覆肥料などを全量元肥として用いたりすることで肥料のムダが少なくなる。堆肥と苦土石灰の施用量はそれぞれ10a当たり2~1t、100㎏が基準となるが、土壌診断に基づいて決める。

定植

 定植時期は50~55穴のセルトレイの場合で本葉1.5枚、ポット苗の場合で本葉3枚の頃である。畝にはマルチフィルムを敷設し、地温が上がる暖かい時に定植する。
 潅水は定植前に行い、定植後の潅水は控えめにして地温の低下を最小限にする。定植後は保温と防風をかねてトンネルなどで被覆する。低温の心配がなくなった時期でも寒冷紗などで被覆すると痛みが少なくなり生育がスムーズになる。