ブロッコリー
交雑しやすく変異に富むアブラナ科植物がため、多くの品種が育成されている。アブラナ科だが、キャベツやハクサイと異なり、適期に花芽分化させて花蕾を大きく発達させる技術を要する。
・作型
キャベツに近く、春播き初夏どりならば生育初期は低温に強い性質が望まれるが、生育後半は初夏の気温上昇期となり、生育は進み一斉に収穫が始まるので花蕾の緩みが少なく乱れが少ない品種が良い。
2~3月に播種する場合、花芽分化抑制や抽苔回避を目的とした被覆を行わなければ良品生産は難しい。育苗時の加温や定植時のマルチ、トンネルなどの被覆による保温を行う必要がある。
夏播きでは、品種を使い分ければ年内どりから三月まで幅広く栽培することができる。極晩生品種ならば四月上旬にも収穫可能であるが品質は低下する。
・生理生態
ブロッコリー発芽適温や生育適温はキャベツとほぼ同じで、花蕾発育期は15~18℃が最適で良質な花蕾ができるといわれる。低温期の作型は発芽から生育初期が生育適温以下となるため、花芽形成に注意する。ブロッコリーは適期に花芽分化させる事が重要で、その後は花芽を正常に発達させなければならない。キャベツと同じ緑植物感応型「グリーンプラントバーナリゼーション」なので、性質を理解して栽培管理することが良品生産のポイントとなる。
品種の早晩性により低温感応苗齢や低温要求程度が異なることが知られているため、作型に適した品種選定を行うことが良品生産のはじめの一歩である。早生種で22℃、中生種で17℃、晩生種は5℃以下で感応すると考えられる。晩生種ほどより進んだ生育段階が必要とされる。
特に問題となる春播きでは、低温感応性が鈍く早生性である品種が良いが、極早生種では早期に低温感応して花芽分化してしまうので小さな花蕾になることが多い。中早生から中晩生の品種を用いると、花芽形成までの期間が長いので、植物体が大きくなり花蕾も大きくなるが収穫期は早晩性に準じて遅くなる。
・育苗
春播きではセルトレイでの加温育苗(夜温育苗8℃前後)を基本とするが、品種によっては無加温育苗も十分可能である。無加温栽培の利点は加温設備を使わずに定植後の低温障害を受けにくい強健な苗ができることが大きい。育苗期間は長くかかるが、定植適期も長くとれるのでゆとりができる。ただし無加温といっても低温期は保温した方が良いので、厳寒期であれば割繊維不織布と穴あきフィルムの二枚重ねでトンネル被覆をするなどの方法を取る。
育苗ハウスは放射冷却の防止と日中の換気の為に側窓はある程度開けっ放しにして問題ないが、最高気温で30℃以上が続かないように開口面積を調節しておく、高温が続いたり、育苗で肥効が効きすぎたりすると軟弱に生育し活着不良となり上物率が低下する。
夏播きでは地床育苗でも十分可能だが、セル育苗のメリット・デメリットを比較して利用する。(キャベツの項を参照)
・定植
キャベツと同じ土壌条件で栽培できる。施肥の吸収は定植後20日後から増え始め、出蕾に向かってさらに上昇する。花蕾の発育には多く必要となるため、肥切れさせないように追肥する。春播きは栽培期間が短いため基本的に追肥せず基肥に重点を置きやや多めに施肥すれば良い。キャベツ同様、本葉一枚目の付け根まで埋め込んでもあまり影響はなく、多少の老化苗でも収穫物に影響は少ない。
低温期は地温を上げるため透明マルチを基本として9230や9235の規格とする。早生や立性の品種は狭く、晩生の品種はやや広めにとると良い。マルチを使用する場合、定植一週間前までに行い地温を高めておくようにする。土壌水分が少ない場合は保温効果があまり期待できない。定植後の低温を回避するため、トンネル被覆やべたがけで日中の昇温と夜間の保温に努めることも重要である。被覆資材を上手に利用し、収穫日の前進化と花蕾の増大を図ることができる。夏播きではマルチは必ずしも必要とせず、畝間70㎝、株間30~40㎝を基準に定植する。