ネギ
ネギの原産地は中国西部で、紀元前12世紀には栽培されていた。日本へは八世紀以降たびたび伝来した。太ネギ系(千住群)、葉ネギ系(九条群)、中間系(加賀群)の三つに分けられる。
・作型
10~11月播種、3月定植、夏秋収穫とする秋播き栽培、2~4月播種、4~6月定植、10月以降収穫する春播き栽培に大きく分けられ、九条群は秋播き、春播きとも播種期が広く、周年栽培されるものが多い。
・種子
ネギの種子は短命で、通常1年程度で発芽不良になる。適温は18~22℃、発芽最低温度は4℃以上、最高温度は33℃以下である。生育適温は16~20℃前後で、あまり強い光は必要としない。乾燥には比較的強いが多湿には極めて弱く、通気性の悪い強粘土や地下水が低い火山灰土壌は適さない。最適土壌pHは6.5前後であるが、5.7~7.4で生育が可能である。発芽は葉鞘の直径が5~6mmに適した苗が7℃前後の低温に遭遇すると分化し、その後の高温と長日で抽苔が促進されるので、花芽分化を回避するよう播種時期を選定することが大切である。黒柄系や合黒系は低温感受性が鈍く花芽分化しにくい。
・育苗
太ネギ系の育苗方法は地床とセルトレイやチェーンポットを用いる方法がある。地床育苗は排水性の良い圃場を選び、事前に完熟堆肥や基肥をよく混和する。元肥の施用量は1㎡あたり堆肥2㎏、苦土石灰100g、化成肥料100g(窒素成分量10%の場合)を目安とする。条間を8㎝として条播きし、発芽後、株間1.5㎝程度に間引いて育苗する。低温期に播種する場合はハウスまたはべたがけトンネルを活用して保温する。チェーンポットは264穴、セルトレイは200穴などの規格が一般的で、専用の用土を使うが、肥料切れが起きないよう必要に応じて溶出期間が長い顆粒状の被覆肥料を5~8g/Lほど混和する。播種粒数は、チェーンポット(定植株間5㎝)で2~3粒、200穴セルトレイでは1粒(株間2.5㎝)~4粒(同10㎝)を目安にする。葉長が20㎝を超えたら、倒伏や病害から防ぐため、葉長12~15㎝になるよう葉先を刈り取る。
九条系葉ネギの場合、本圃1aの栽培に対し20~40㎡の苗床を準備し、元肥の化成肥料は200g/1㎡を目安に与える。条間は25㎝とし1㎡当たり40mLを条播きする。
・圃場の準備
事前に圃場10aに堆肥3~2t、苦土石灰をpH6.0~7.0になるよう施用する。根深ネギの養分吸収量は10aあたり窒素10~24㎏、リン5~7㎏、カリ20~28㎏程度で、収量1tに吸収される窒素量は3~4㎏とされる。定植直後は肥料は多くはいらないが、50~60日後からは吸収量が増加するため、基肥は全体の三分の一、10a当たり窒素成分量で4㎏を全面に施用する。残りの三分の二は追肥とし、7~10月に土寄せとあわせて施用する。緩効性肥料を用いて全量元肥にする方法もある。
・定植
畝間90~100㎝、深さ15~20㎝の植え溝を作り、葉数が2枚以上、葉鞘径が2.5mmになった苗(播種後50~60日)を株間2~3㎝で定植する。チェーンポット苗は専用の簡易移植機を用いる。最初は根が隠れる程度に軽く覆土し、その上に稲わらを厚さ5㎝に入れておく。