ニンジン
ニンジンは、アフガニスタンの山麓地帯原産のセリ科1~2年生草本植物で、東洋系および西洋系ニンジンの2種類がある。現在、主に栽培されているのは長さ15~20㎝の五寸ニンジン(西洋系)である。
・作型
東洋系ニンジンは、戦前までは栽培の主体であったが、今では紅色で肉質が柔らかい「金時」が正月用に供されるくらいである。
西洋系ニンジンは、早生で根長10㎝ほdの三寸ニンジンから根長60~70㎝大長ニンジンまで大きさも様々である。色も橙色だけでなく紫色、黄色、白色などがあり、形状も円筒形や円錐形など多様である。
作型は温暖地では主に春播きと夏播き栽培となる。春播きでは晩抽性で裂根しにくい品種。夏播きでは耐暑性と耐病性のある品種を選択し、特に夏播き年明け以降に収穫する場合では、凍霜害を避けるため吸い込み性が良い品種を使う。
・種子
種子は光によって発芽が促進される好光性種子である。発芽適温は15~25℃、7~10℃で発芽するが、10℃以下になると発芽が遅れ、35℃を超えるとほとんど発芽しない。発芽の好適土壌水分は20~60%で、これ以上乾燥すると発芽率が低下する。地上部の生育適温は18~23℃で比較的、冷涼な気候を好む。根部の肥大や着色の適温は、地上部よりやや低く10~21℃である。また、25℃以上になると根部の肥大不良、12℃以下になると着色不良が生じるので注意すること。
本葉10枚以上で低温に
感応し花芽分化する緑植物バーナリゼーションで、5~15℃以下の低温に25~60日おかれると花芽ができる。その後の高温長日で抽苔、開花する。
・圃場準備
生育初期に乾燥すると発芽不良を招き、生育後期に水分が多すぎると肌の荒れ、裂根を起こしやすくなるので、適度に水分の保持ができ、排水良好な圃場を選ぶ。また、酸性土壌(pH5.3以下)では生育が悪くなるので、石灰などを施用してpHを矯正する。
ニンジンの養分吸収量は、10a当たり窒素7㎏、リン3㎏、カリ16㎏程度、土壌診断を行い、ECやpHの値から圃場の状態を把握する。肥料の残り具合や品種による吸肥力の違いなどの合わせて施肥量を加減する。堆肥は、岐根の原因になるので、前作のときに十分に(2t/10a)施用しておく。緩効性肥料や有機質肥料を主体に、春播き栽培で10aあたり窒素、カリともに12㎏、リン16㎏を全量元肥として施用する。
夏播き栽培では、窒素、カリともに10㎏、リン14㎏を元肥として施用する。春播き栽培では、ベッド幅70あるいは120㎝、通路50㎝の畝を作り、9515(条間14㎝、株間15㎝、5条)や3715
(条間15㎝、株間15㎝、7条)の透明から黒色の小穴マルチを敷く。夏播き栽培では、ベッド幅45㎝あるいは70㎝、通路50㎝の畝を作る。
・播種
ニンジンの発芽は、土壌水分の影響を強く受けるので、乾燥しているときは、降雨後から潅水してから播種すると良い。種子は裸種子とコーティング種子があるが、コーティング種子を用いると播種作業が容易である。春播き栽培では、人力野菜播種機(スキップシーダー)を使うか、マルチの穴に深さ1㎝の播き穴をつけ、1穴に2~3粒ずつ手播きし、覆土して手で軽く押さえる。土がかわいているときや、コーティング種子を用いるときは、播き穴の深さを1.5~2㎝と深めにする。夏播き栽培では、45㎝ベッドに3条、70㎝ベッドに4条で、条間15㎝で、株間は6~10㎝とし、コーティング種子を手押し式播種機(クリーンシーダ、ごんべえ)により2~3粒ずつ播種する。いずれの作型でも、播種後は寒冷紗を芽が見え始める頃までべたがけにする。ただし、べたがけの除去が遅れると、寒冷紗に絡みつくので気を付ける。また、春播き栽培の2~3月中旬播種の場合、POフィルム(ユーラックカンキ)や不織布(ベタロン、バスライト)でトンネル被覆し保温する。
間引きの省力化のため、1粒播種を行う生産者が増えている。ニンジンの種子は発芽力が弱く寿命も短いが、種苗会社の種子選別技術が向上し、以前に比べ発芽率が格段に良くなっている。それでも、ニンジンの種子は他の野菜に比べ発芽率は低く、欠株が多くなりやすく、収量も2~3粒播種より減少する。そこで、夏播き栽培では播種間隔を慣行の7割程度に狭めることで、サイズは多少バラツクが3粒播種に近い収量を確保する事も可能である。また、潅水は発芽率向上に有効なので、設備があれば1粒播種の場合、必ず潅水を行う。