ダイコン

 ダイコンの原産地は地中海、インド、中国を中心とした広範な地域と推定され、アジアからヨーロッパの温帯地方に分布している。日本でも古くから桜島大根や守口大根など、特徴のある地方品種が多数存在している。

・作型
 ダイコンはもともと冷涼な気候を好み、耐暑性や耐寒性は強くないが、品種改良により栽培可能な地域や季節が広がってきた。しかし、現在の栽培品種の多くは、生食・煮食兼用で肉質が良く、筒型の形状をした宮重系の青首種であり、それ以外の品種群の利用は減少している。
 基本的な作型は八月下旬~九月中旬に播種する秋播き栽培だが、2~4月播種の春播き、12月~1月播種の冬播き栽培などが行われている。6~7月播種の夏播きや10~11月播種の春どり栽培は地域が限定されるが、関東地域でも被覆資材の使い方を工夫することで良品生産ができるようになっている。

・種子
 ダイコンの種子は比較的長命で、常温でも3年程度の発芽能力を維持する。発芽適温は15~30℃で、比較的高い温度でも発芽が可能である。嫌光性の性質を持っている。
 育成適温は17~21℃で、最低は5℃、最高は35℃とされる。マイナス5℃では凍害が発生し、42℃以上になると高温障害が発生する。土壌適応性は比較的広いが耕土が深く、保水力があり、排水の良いやや軽い沖積砂壌土や火山灰土が最適である。土壌酸度はpH5.5~6.5が適するが、酸性には比較的強い。
 花芽分化は苗の大きさに関係なく、催芽した時点から低温に感応して誘起される。一般に、発芽以降の幼苗期に2~5℃で15~20日経過すると花芽分化する。花芽分化後は高温と長日条件によって抽苔が進む。なお、低温感応しても、20℃以上の温度に4~6時間反復して遭遇すると、その効果は打ち消され、花芽分化はしなくなる。(脱春化作用)

・圃場準備
 堆肥などの有機物の施用が重要だが、未熟なものを施用すると微生物の発酵作用により根が焼けて、岐根、裂根などが発生する。このため、堆肥施用は播種の半年前を目標に行う。石灰資材はpHの矯正のために施用するが、pHが高くなるとそうか病が発生しやすくなるので、むやみに施用しないことである。
 秋播きのマルチ栽培では、窒素、リンは10a当たり成分量でそれぞれ14㎏を全量基肥で施用する。無マルチ栽培ではその8割程度を基肥とし、残りの2割を追肥として与えるようにする。栽培距離はマルチ栽培で二条植えの場合、ベッド幅70㎝、通路50~70㎝とし、マルチは黒の9237~9230を用いるのが一般的。なお、低温期んは透明またはグリーン(雑草抑制)で、規格は9235など株間を広くするマルチを用いて地温を高くする。高温期に播種する作型では光反射性の高い白黒タイプを用い、株間を24㎝(規格で9224)以下にし、地温の上昇を抑制するのがポイントである。

・播種方法
 種子は10a当たり6dL~1L用意する。栽植密度は4700~7000株/10aである。マルチ栽培では1穴に5粒(固定種)~3粒(F1品種)播種をする。播種する深さは2㎝程度とし、覆土をしたらよく鎮圧する。鎮圧することで毛細管現象により地下の水分が上昇しやすくなる。無マルチ栽培では3~5粒の点播を行うか、播種機やシーダーテープを利用する。シーダーテープ用の播種機もあり、精度よく、省力的に播種を行うことができる。

・播種後の管理
 秋播き栽培では播種直後から寒冷紗や防虫ネットでトンネル被覆し、害虫や風雨からから幼苗を保護する。低温
期に播種する作型では、不織布によるべた掛けと、穴あき農ポリのトンネル(2~3列の穴)を併用して保温する。不織布には色々な種類があるが、より低温期に向かう時期には厚みがあり保温性を重視した資材、光量が増える二月以降に播種する場合には透光性の高い資材が適している。厳寒期には農ポリではなく保温性の高い農ビフィルムなどでトンネルする。トンネルの除去時期は、秋播き栽培では葉先がネットを押し上げる頃、晩秋から春播きで保温用の被覆については三月下旬頃を目安とする。
 間引きは本葉が4~6枚の頃に行う。播種粒数が多いときは早めに間引きを行い、軟弱化を防止する。