ジャガイモ
ジャガイモは、ナス科ナス属で原産地は南米のアンデス山脈の山岳地帯である。冷涼な気候で栽培でき、やせ地でも育つ反収の多い救荒作物である。寒冷地では夏作になるが、関東以西の温暖地では春作と秋作の2期どりができる。
・作型
春植えは関東以西における作型で生育適温の期間が短く低温期に植え付けるため、2月植えはマルチが生育促進に効果的である。秋作は収量がやや低くなるが、春作よりもデンプン含量が高く品質の良いものが収穫できる。品種は
早生は「男爵」、「キタアカリ」、中生は「メークイン」、「とうや」などがある。気候や作型などを考慮して選択する。春作は感応する品種も多いが秋作では休眠が短い品種に限られてくる。
・生理生態
ジャガイモの塊茎は、地中主茎の節から発生したふく枝(ストロン)の先端部が肥大したものである。塊茎のふく枝についている側が基部、反対側が頂部となり、芽は頂部に多く集まっており、その頂芽が休眠芽に変わる。塊茎は、肥大期から完熟期を経て収穫されても一定期間は伸長生長をせず休眠期となる。この休眠を「内生休眠」といい、萌芽に好適な条件下でも伸長生長しない。そのため、種イモは内生休眠期を過ぎていることが重要となる。内生休眠の長さは品種で異なり60~140日程度であるため、秋作では休眠の短い品種を選定する。
内生休眠期が過ぎても低温などの環境条件によっては伸長生長しない現象を外生休眠(強制休眠)という。塊茎の貯蔵性や種芋の利用価値を高めるために休眠を調整する場合、内生休眠は遺伝的要因で決定され、延長することはできないので、外生休眠を調節する必要がある。具体的には、貯蔵期間を延長するために温度は2~3℃、湿度90%以上に保ち、暗黒条件で保存すると良い。なお、内生休眠時に低温は必要ではなく15℃までの室温で段ボール箱や麻袋などで保存できる。
種イモの出芽は休眠が明ければ5℃以上で動き出し、浴光することで徒長せずに充実した芽となる。生育適温は10~23℃で高温ほど地上部の生育が優れ、低温では夜温が低いと塊茎の肥大や養分蓄積が促進される。短日では塊茎の形成と成熟がすすみ品質が高まる。土壌適応性は広いが、粘質土で収量や品質はは優れる。pHは5.0~5.5が適し、4.5以下や7.0以上で生育は劣る。収穫後からの日数が適切な種イモであれば、内生休眠が明けており充実した芽が揃うので生育がスムーズで収量は多い。
・種イモ準備
種イモによって伝染するウィルス病やそうか病などの重要病害が多く、国営検査に合格した健全な種イモを使う事が推奨される。種イモの良否、取り扱いがジャガイモの生育や収量に大きく影響するので、種イモや生育初期の管理は重要である。
種イモは、植え付け前に休眠が明けており、芽が動き始める作型に適した品種を選ぶ事が、収量を高める上で重要である。収穫後の日数が短く休眠が明けていない種イモでは初期生育が遅れ、茎は太いが茎数が少なくなるため、大イモだが減収する。
種イモは、大きいほど出芽が早く生育旺盛となり株当たり収量は多くなるが、茎数がおおく粒揃いは悪くなる。適性大きさは一個40~60g程度である。切断する場合、イモの頂部に芽が多く、萌芽も早いため頂部を中心に縦に切り、どのイモにも2~3芽を着けるようにする。切断した面は2~3日乾かし、コルク化させえ腐敗を防ぐ。切断面に草木灰などを着けることはキュアリングを遅らせるために避けた方が良い。
・定植
カリは塊茎に炭水化物を蓄積するのに必要である。不足ふると減収するが、多すぎると石灰や苦土の吸収を阻害するので窒素1.5倍程度とする。いずれの成分も開花期まで増加し、全量の半分を吸収する。施肥量の増加とともに増収するが倒状や病害を助長し、デンプンかも低下すのので適性施肥に努める。石灰はそうか病防止のために通常は施用しないが、pH5.0以下では生育が悪くなるので施用する。植え付けの時期は遅霜の被害を受けなければ早い方がよく、地温が10℃あれば問題ない。通常は条間60㎝、株間30㎝、深さ6~8㎝に溝を掘り、種イモの切り口を下に向けて植える。
種イモは、休眠期間が過ぎても芽が伸びず揃わないこともあり、暗所保存では細長く伸びてしまう。そのため2~4週間程度浴光させて出芽促進と芽の充実をはかり、植え付け地の芽長が約5mm程度となるように処理する事もある。
近年はマルチ栽培の増加とともに催芽は省略される。栽植密度は一条植えで60~70㎝、株間30㎝前後を標準とする。通常覆土は5~6㎝とするが、低温期や秋作の高温期では8~10㎝程度とする。マルチをする場合は降雨後に被覆し、出芽したら穴をあけて芽を出す。色は透明ならば地温が上昇しやすく早植え付け・収穫が可能となるが、栽培時期が遅くなる場合は、温度が高くなりすぎ腐敗が増えるので黒マルチが無難である。なお、マルチ栽培の場合は培土しない。