トマト

 トマトは、アンデス高原地帯原産のナス科草本植物である。江戸時代に観賞用として入って来たが、現在ではミニ、中玉、大玉などサイズも様々で、色もピンク、赤の他に青、紫、緑、黒など多様なものが流通し、消費者に一番人気の野菜である。

 

作型

トマトは、促成、半促成、早熟、普通、および抑制栽培に作型が分化し、施設や資材の利用により周年生産している。抑制栽培は、育苗期が梅雨で定植から収穫初期までが高温期なので、生理障害や病害虫の発生も多く、栽培が難しい。さらに他の作型に比べ果実が小さくなるので、果実肥大の良い品種を用いる。また、早熟栽培後半および抑制栽培では裂果が多く発生するので、裂果しにくい品種を選ぶのも重要なポイントである。

種子

種子の発芽適温は20~30℃とされ、最低10℃、最高35℃程度でも発芽する。また、野菜の中では種子の寿命が比較的長く、貯蔵条件さえ良ければ保存が可能である。開封した種子が残った場合、防湿包装の種子袋に入れて密封し冷蔵庫で保存するか、気密性の高い容器に乾燥剤と一緒に種子を入れて保存することも出来る。
 苗の生育適温は、昼間0~25℃、夜間15~20℃、地温18~22度程度である。育苗温度が高いほど苗の生育は早くなるが、第一花房の着花節位が上昇し、着花数が減少する。

育苗

播種は育苗箱、またはセルトレイに行う。育苗箱の場合、条間6㎝、深さ5mmで播き、溝を付け、1.5~2㎝間隔で条播きし、種子が隠れる程度に覆土して軽く抑える。
セルトレイの場合、直接定植するときは50~128穴、ポットに鉢上げ(2次育苗)するときは128穴か200穴のトレイを用いる。
 水分を含ませた育苗用土をトレイに均一に詰め、セル中央部に深さ2~3mmの穴をあけ、1粒づつ播種し、覆土をする。育苗箱、セルトレイのいずれにおいても、播種後は充分に潅水し、表面を新聞紙で覆って乾燥を防ぐ。播種床の温度は発芽まで25~28℃で管理し、発芽し始めたら新聞紙を除去する。
 発芽後は昼間23~25℃、夜間は15~20℃程度の温度で管理する。育苗箱では、本葉1.5~2枚程度の頃、根を切らないように苗を抜き取り、10.5~12㎝のポリ鉢に移植する。鉢上げ後2~3日は寒冷紗などで遮光し、活着を促す。セルトレイでは播種後3週間程度、本葉2~3枚の頃にポリ鉢に移植する。活着後は葉が重なり合わない内に、早めに鉢と鉢の間隔を広げるようにする。抑制栽培では、梅雨明け後の高温期に遮光性のある遮熱資材(メガクール、冷涼など)で晴天日の日中だけ遮光を行う。潅水は一日に必要な量(夕方に生長点付近がやや萎れる程度)を与える。遮光や潅水はしすぎると、軟弱徒長苗になるので十分に注意する。

接ぎ木

接ぎ木は青枯病、半身萎凋病。萎凋病レース1~3、ネコブセンチュウなどの土壌伝染性病害虫の発生を防ぐことを目的に行う。穂木および台木品種によっては接ぎ木ができない組み合わせがあるので注意が必要である。(図2)

定植の注意点

定植は天気が良い風の無い日に行う。特に定植が高温期に当たる抑制栽培では、暑い日中を避け夕方に定植すると良い。ポリ鉢での育苗の場合、早熟栽培では第一花房が一花咲いた頃、抑制栽培では第一花房の蕾が見え始めたやや若苗が定植適期である。(写真1)
 また、セルトレイから直接定植をする場合は、128穴で本葉3枚、50~72穴で本葉4~5枚程度で、根鉢が形成されトレイから簡単に抜けるようになったら定植適期である。ただし、露地栽培では潅水が調節できず、草勢の管理が難しいので、直接定植には向かない。早熟栽培では第一花房が一花咲いた苗を株間40~45㎝、抑制栽培では株間35~40㎝の二条で定植する。
 定植直後は栄養生長型の生育になりやすいので、萎れない程度に株元に軽く手潅水する(200ml/株 程度)。また、セルトレイから苗を直接播種する場合に土壌水分が多すぎると過繁茂になり、異常茎や障害果が発生するので特に注意する。抑制栽培では遮光資材(メガクール、冷涼など)で晴天日の日中だけ遮光を行う。